☆ハイローハート
あこがケータイを見て「あ、とよきから電話かかってきてる」と呟いてアタシの手を引いた

「通話できるところまでついてきて」

と言われて、一緒に歩いていく


さっきまでは気付かなかったけれど、大きい病院だから点滴をカタカタと引きずる人や、松葉杖でポケットにタバコを入れた若い男性とすれ違う

面会時間を過ぎても病院内にいるアタシ達を見て、何の表情も浮かべず通り過ぎていく


自動販売機が並ぶ一角が通話可能エリア

とよきに電話をかけ直して状況を話しているあこの声を聞きながらHOTドリンクが並んでいるのを見ていた


もう、HOTが発売される頃


留学から帰って来てどれくらいたった??


飛行機から降りてきて、人ごみの中……飼い主を探すゴールデンレトリバーみたいに首をのばしてキョトンとした目の理一を見つけた事を思い出す


背が伸びて、髪も伸びて、開いたシャツの間から見えるシルバーのネックレスがなんかちょっと気取ってて……

一年ぶりに会う“好きだった人”に妙に照れて、笑うことでごまかした


そういえば、あのネックレスをつけてるところをあれ以来見ないけど

って考えている時にものすごい速さであこに肩を叩かれて「おおうっっ!!」とリアルびっくりなかわいくない声を出してしまった


とよきとつながる電話を耳に当てたまま、今は消灯している外来受付を驚いたような目で見つめているあこの視線を追っても何もない


???


「あこ、何?」

「見えた?病院の中にカブがいた」

「え~~?どっかの猫が入ってきたんじゃないの??」

「見間違えるわけないもん、あれ絶対カブだ」


見間違えるわけがないといわれても、ここにいるわけがない

「とよきと電話つながってるんじゃないの?いいの?」

「……もしもしとよき??そーゆうことで、バイバイ」

とあこは電話を切ってしまった

< 686 / 756 >

この作品をシェア

pagetop