☆ハイローハート
あこはアタシの手をまた掴んで今度は少し早足で歩き出した


「あの機敏さもカブだった
受付前に並ぶイスの背に乗ってもバランスよく走るあの運動神経は絶対カブ!」

「猫ってそもそも運動神経いいんじゃないの??」

「そうじゃない猫もいるよ!
先代のウルトラはどんくさかった!
飲み水が置いてある場所は必ず決まってるのに、何回も間違って足つっこんだり、ぶつかってこぼしたりしてたもん!」

運動神経っていうより、アホやん?

「運動神経いいのはわかったけど、病院の中に猫なんているわけないし
ましてやカブなわけないってば」

「あれはカブなの、絶対そうなの!!」


あこは確信を持って歩いていく


「まさか今、カブ探してんの?」

「カブがこっちに行ったように見えたもん」


でもこっちって理一の病室

なんなん、なんなん??

前のビジネスホテルの時といい、あこもMJのお母さんみたいに霊感体質??


さっきまで廊下にたっていた理一ママと龍一、後から来て一番近くにあったベンチに座っていたパパとお兄ちゃんの姿がなくなっている


「あれ?みんなは?」


とアタシが言った瞬間明らかに足に何かが触れた気がして「んんんんっっ!!」とじたばたしながら壁際に逃げると、あこはアタシ達が今来たばかりの道を振り返っている


何?

何ッッ??


「今、なんか足元に……っっ!」

「うん、びっくりしたね」と答えるあこの声はちっともびっくりしてなくて、むしろ落ち着いている


足がぞわぞわする
鳥肌が全身に……

「理一っっ!」

と呼ぶママの声が聞こえて、アタシは病室の開いたドアに目を向けた

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