☆ハイローハート
足がもつれて転びそう

気持ちに足が追いつかない

あこと競うように理一の病室に入ると、アタシを診てくれた女医先生がベッドをのぞきこみ……看護婦さんがカチャカチャと金属音を鳴らしている

みんなの背中に隠れて理一が見えない


「うう……う……」


って誰かの唸り声

看護婦さんの1人がアタシとあこに気付いて開けてくれた場所に行くと、二人して理一をのぞきこむ

あこがアタシの腕をガシっと掴んで「理一……」と呟いた


女医先生が「聞こえる??」と小声でたずねると、眉をしかめて体を縮こまらせながら小さくうなずく理一

「見えてる??」と更にきくと、また理一がウンウンとうなずく

だけどその表情は苦悶にゆがんでいて……

女医先生が「どこか痛いの?」とひざまで掛け布団がめくられている全身に目をやった


「う……」


長い間声を出していなかったから、声を絞り出しているような感じ

理一は薄く唇を開いて、何度かうめき声を出すと……


「ん……あ……」

とからだをにギュっと力を入れ……


「……ちんちん」


とはっきり言った

女医先生は戸惑うことなく「女子は後ろ向いて!」と声をかけて、理一の入院患者用のパジャマの裾をつかむ

アタシとあこが後ろを向くと、あこは掴んでいたアタシの腕を怒ったようにブンっと投げ捨てた


……アタシに怒られても


反対隣を見るとママも後ろを向いている


……ママは別に見てもいいんじゃない?


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