☆ハイローハート
「別に何もなってないよ
普通で、元気」


女医先生の言葉に疑問を抱く
普通で、元気??


普通なん?

元気なん??


後ろを向いたままでいると、理一が「……踏まれた」とまだ苦しそうに言う

踏まれたァ??

「何か当たったのかな?」

と女医先生は不思議そうに答えているけれど、それなら理一は「踏まれた」とは言わないと思う


「……カブ、が」


理一が消えそうな声でカブの名前を出すからあこは勢いよく振り返ってしまった


直後に「おえっ!」とあこが再び理一に背を向ける


……自分で振り返っといて「おえっ」っていうのもひどい


「女子、こっち向いていいよ」と女医先生が言うからみんなが理一に向き直ると、彼はもううつろな目をしていた


「俺を起こそうとして……踏んだ……」


と途切れ途切れに言いながら、目を閉じていく


「理一……」とママが理一を呼ぶ


女医先生は「キツイ薬を注射したから、副作用も強いんですよ」と言いながら聴診器を首にかけなおした


「意識も一度戻ってるし、このまま熱が上がらないように注意しながらちょっと様子みましょうか?」


先生が話す横で、首の下に入れている氷枕の温度を看護婦さんが確かめている

肩まで布団をかけると、「じゃあ、安静第一なんで、明朝まで面会謝絶」と女医先生ははきはきした声で言うと、アタシ達と一緒に部屋を出た

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