☆ハイローハート
理一の部屋に入ると、妙に散らかっている

「これ、片付ければいいの?」

「うん、それと俺の着替え出して……
俺、家のシャワー浴びたい」

「どこ?」

理一に言われるままに着替えを出して、片付けを命じられ……

シャワーを浴びている間にがさごそと出しっぱなしの漫画や、ころがっている文房具をまとめる

病院で使ってたものが入ってるカバンをあけると、ケータイとまた漫画

なぜか未開封のボックスティッシュが1箱

もう何も入ってないかな~?と中を手で探ると小さくて冷たいものが指先に触れた


小銭??


と取り出すと細いリング


明らかに女物

特に刻印とかもない

人差し指と親指に挟んで…じいっ…と眺めた後、机上の文房具を並べた横に丁寧に置いた


今度は床に座って服をたたむ


家で1人でしていることと変わらない

なのに違う

全然違う

膝に乗せた理一のTシャツを顔の近くに持ってきて、鼻で大きく息を吸うと理一のニオイがする

愛しくなって、それを胸に抱きしめた


この家は、人の気配がいつもあるの

誰かがくしゃみする声だったり、キッチンのガスコンロの音だったり、誰かがドスンと音を立てたり……

絶対に1人じゃない


「お、キレイになったー」と言いながら戻ってきたから慌ててTシャツをたたんでいるフリ

理一は頭からタオルをかぶって、部屋着のジャージとトレーナー

ズボンは腰の傷にあたらないようにずいぶんと下に下げて履いているから、ひきずる裾を折っている


開いたドアの隙間からはパパが見ているテレビの音が漏れ聞こえてきた

< 714 / 756 >

この作品をシェア

pagetop