☆ハイローハート
「ここに置いておくね」

とたたんだ服を揃えた


理一が薬の袋をアタシに差し出して「消毒消毒」と服をまくる

背中側の腰辺りの傷と腕の傷

今もまだ赤味を持って、腫れが引ききっていない


「痛くない?」

「平気」


消毒を終えて薬を机の上に置いた理一がそこに置かれたリングに気付いたようだった


「……コレ……」

「あ、それカバンに入ってたから出しちゃった、ごめん」


所在なさげにするアタシの前に理一が立つから、その顔を見上げる

ここ二年位アタシの身長はほとんど伸びていないのに、理一はどんどんと伸びていく

であったときはそんなに変わらない身長やったのに


拭いただけの髪

少し赤い目


見つめてくる視線を逸らせない

耳の横から首に髪から落ちた雫が流れていくから、手をのばして指先でそれをなぞった

首筋の血管を流れる血が温かくて、手を離しがたい


理一に対して、言葉にならない思いを抱くのはもう何度目???

いつだって苦くて、それなのに甘くて、説明しきれない感情があふれ出すの

口にすればきっと、単純な言葉

なのに伝えるのは容易じゃなくて、アタシの目を熱くする


目にうつる理一の輪郭が揺れる


「あこから聞いたんだけど……」


そう言いながら理一は、涙がこぼれてしまわないように俯いたアタシの頭を両手で撫でた

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