☆ハイローハート
「俺が寝ながらうわごとでお前のこと呼ぶのを聞いて、さやかがこれを置いていったんだって」

頭を撫でる優しい手と、理一の声

すっごく近いのに、遠い理一

いつだって近づかない二人の距離


だから諦めようとしても、どれだけ離れても、目と目を合わせれば急な速度で恋に落ちていく


その速度と二人が離れていた時間をかければ、あとどれくらいでこの想いが理一に届くのか距離がわかる???


「みさきがそうやって、俺の前でいつも悲しい顔をするから……
何度も諦めようと思ったんだけど」


理一

アタシ達、今同じ道にいる???

もう、すれ違わない???


背伸びして、あごを持ち上げればキスが交わせる近さだけど

触れる唇が切なさを運んでくる気がして、また悲しい顔をしてしまいそうで……アタシは更にうつむいてしまった


なんかもう……
体が海になったみたい

寄せては返す波みたいに

たまに凪いで、たまに荒れて

流されてあらがって……


理一は気弱い声で「座っていい?」と聞きながらベッドのふちに腰をかける

彼に体を向けると、うつむいたままのアタシの視界に理一が入った


「前にも言っただろ
恋をしたのが初めてで……
諦め方すらわからない」


「……」


「……やっぱ、諦めた方がいいよな……?」


今にも他の音に紛れて聞こえなくなってしまいそうな理一の質問に、首を振った

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