☆ハイローハート
出血量の割りに、傷口はそう深くなくてホッとする


「これなら病院で縫う必要もないかな」

立ったまま体を折り曲げてベッドに手をつかせると傷口が目の前にくるようにハーフ女の横にしゃがみこんだ

まずタオルで足を伝っている血をキレイに拭き取っていく


傷口あたりは優しく

血が乾きかけているところはゴシゴシと


「いたーーーい」


と、独特なイントネーションの苦情は受け付けず足を拭き続ける


「いたいいたい、イタタタ」


あー……、うるさいなあ~

苛立ちから自然と血を拭う手に力が入る


「痛いわっ!!」

「うるさいわ!!!」


間髪いれず返してやると、ハーフ女の体がビクッとなった



新たな血が傷口にじわっと浮かんでくる


たっぷりのガーゼに消毒液をしみこませる様子をじっと見ているハーフ女


「消毒液、しみるやろな~

なあ、痛いやろな?

怖いわ~

しみたら、痛いやろ?

怖いわ~」


この女がひっきりなしに話続けるから、玄関のドアが開いた音とか、その後に聞こえてくる男の話し声とかが全く聞こえていなかった


「消毒するよ」


ハーフ女がベッドの布団をぎゅうっと握って、体に力を入れ目を閉じている

冷たい消毒液がしみたガーゼを傷口にペタンとあてた瞬間ハーフ女の顔が一瞬で苦痛の表情に変化


「キャーーーー」


部屋に響く悲痛な声



それと同時にアタシの部屋のドアがバッタンと大きな音を立てた


「よーーーーっす」




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