☆ハイローハート
……そういう会話、あんまり嬉しくないんだ

アタシがバツの悪そうな顔をしているから、あこが「モテモテでいいじゃん」なんて笑顔を向けてくる

「そういうのは、モテるっていわへんねん」

「ん?」

「昔、大阪におる時につきあってた男に言われたことあんねん」

「なんて?」


あこが首をかしげるから、今からいう事の重さを軽減するためにアタシも首をかしげた



「男にほいほい声かけられるのは、お前が簡単にヤレそうな女に見えるからやって」



もちろんあこから返答がかえってくると思っていたのに、背後からかわいい声で「ふふっ、そうかも」と聞こえてくる

さりげなくナナメ後ろに目をやると、さやかが微笑んでいるのが目に入ったんだけれど
それよりも、さやかをチラリと横目で見た理一の目が寂しげで、そっちの方が気になった

アタシと目が合うと、理一はふっと視線をそらしてしまったんだけれど


「真意はついてるかもしれないけど、それだけじゃないでしょ」


そう言ってあこは腕組みをして視線をあちこちに動かしている

何かを一生懸命はじきだそうとしているような、そんな感じ

ナルは相変わらずコーンをくるくるまわしてガジガジかじりながら言った


「そりゃ、ヤレたらラッキーくらいは内心ちょっとおもってるかもしんねーけど、それよりも何よりもかわいくなきゃ声かけないっしょ」

「だな、それより諸岡」


……とよきに名前を呼ばれると、迫力があってちょっとドキドキするんですけど


「お前が簡単にヤレる女かってことよりも、俺らくらいの男は女を見るとヤリたくなる年頃ってことだよ」

いや、そんな威風堂々と宣言されても

悪びれた風もなくとよきはしれっとしてるけど、あこに思いっきり睨まれてるし……

理一が「しかもさ~」と話し出す

「自分の彼女に“簡単にヤレそうな女”なんていう男とは別れて正解」


何、この人達
なんでこんな全力でアタシをフォローしてんの?

心のどこかでそんな声がきこえてくるけど、温かい気持ちが流れ込んできて戸惑う

アタシがこの感情をきちんと受け止める前にさやかがその空気を変えた


「あ、理一くん、観覧車がライトアップされたよ」



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