☆ハイローハート
でも、ハッと気付いて慌てて手をひっこめて斜め後ろ、上方のゴンドラを確認する

「見えてねーって」

理一が小さく笑う


夕日はもう沈んでしまって、観覧車のライトが一際目立つ

ジェットコースターやメリーゴーランドの明かりは幻想的に視界を彩った


「やばいね、相手がみさきでも、ムード満点じゃん」

「なんなんその言い方、悪かったねアタシで」

「そやねー」

「バカにしてんのか」

二人して笑うからゴンドラが少し揺れる


「さやかに告白せーへんの?」

「余計なお世話」

「そりゃ失敬」



沈黙

沈黙



「理一、そろそろアタシの髪の毛離して」

「だって、やわらかくて手触りいいんだもん」


理一の指の間からアタシの髪がふわりとすり落ちていく


「みさき」

「ん?」

「……あのさ」

「なんですか?」

「今日はWOWOW、GSPとコスチェックのコーチ対決だから」

「そう……」

「うん」



それから理一とアタシは何も話さなかったんだけれど

普通なら居心地が悪くなるような沈黙も、二人なら感じなくて……

妙に穏やかな時間が、観覧車の回転と同じ速度で進んでいった




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