☆ハイローハート
「ほら、ソファー座って」

理一に促されるまま座ると、理一が横に座ってアタシの手をとり保冷剤を押し当てた

「太ももの傷口といいさ……
女があんまり体に傷つけんなよ」

「いまのはやかん野郎が勢いよく」

「やかん野郎のせいにすんな」

理一がふわって笑うから、なんかこの微妙な距離感が恥ずかしくなってしまう

「自分で冷やす」

「じっとしてろ」

一瞬身をよじったのに、一言で動きストップ


「……帰りにさ」

理一が唐突に話し出すから(ん?)と見上げると、彼はアタシの手にあてた保冷剤をじっと見つめていた

「あの子モテるから、ダメもとなんだけど」

あの子??

「俺とつきあってみない?って言ったらさ」

ああ、さやかの話
黙って続きを待つ

「OKしてもらった」

「……それで、ギュウってして、チューしたやろ」

「…………」


チューしたかどうかはヤマ勘なんだけど、相手の反応はわかりやすい


「理一からシャネルのアリュールの匂いがすんねん
今日、さやかがつけてた香水」

「マジで?」

「良かったやん」


アタシは理一から保冷剤を奪うと、立ち上がった

なんとなく一気にそのアリュールの匂いに嫌悪感を覚えたから

人のハッピーを祝えないほどゆがんだ性格じゃないはず
誰が誰と付き合ったって、関係ないし

なのに、心に異物が混ざったのがわかる


友達をとられたような感覚?


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