☆ハイローハート

友達って、理一とは出会ってまだ数週間だし
むしろ、アタシが一番新参者だし

「コーヒー入れなおすか」

と立ち上がって動き出す理一をボーっと見ていた

一人ぼっちで過ごす夜のさびしさを、たまに理一が紛らわしてくれてたから？？
また孤独がやってくるのが怖い？？

ううん、孤独には慣れている
アタシが今まで感じていた孤独は、こんな程度じゃない

父の日だって
母の日だって
アタシは一人ぼっちだった

父の日に描いた絵をよその家の前の溝に細かくちぎって捨てたんだ

母の日に作った紙のカーネーションは、学校のトイレに流した

家族のことを作文に書かなくちゃいけない時は
一生懸命のび太のママやちびまるこちゃんのお母さんを想像しながら書いたんだ


理一に彼女ができたくらいで、孤独なんか感じるはずがない

「みさきもコーヒー飲むだろ？」

理一がキッチンからこちらを見てマグカップを持ち上げた


「うん」


そう返事して、アタシは気付く


――洗面所に行き、乾燥機から乾いたタオルを取り出してたたんでは引き出しに入れていく

答えはイージー


理一の腕が、さやかを抱きしめたことがイヤ
理一の胸に、さやかが顔を寄せたことがイヤ
理一の指が、さやかの髪に触れたことがイヤ


理一から、さやかの匂いがすることは、すごくイヤ


テレビの方から笑い声が聞こえたきた

洗濯物を片付け終えてリビングに戻ると、理一がこっちにピースサインを出して笑ってる


「ジョルジュサンピエールの圧勝」


“好き”って気付いた途端、失恋とは