☆ハイローハート
アタシは少し離れたところに座って、理一がいれてくれたコーヒーを飲んでいた
試合のダイジェストを見ながら、アタシはぼんやりと考える

ジョルジュサンピエールが勝ったことでテンションの高いまま理一は次回予告を見て、……楽しそう

――でもさ、理一


「お、また今週あるじゃん、エキサイトマッチ」

――でもね、理一


コーヒーを飲み干すと理一は伸びをして立ち上がった

「今日は最初見逃したからあっという間に終わっちゃったよ」

そう言いながら玄関へ向かう理一を追う

「また来るね、今日はおつかれさん」

理一が靴を履いてるのを見ながら「もう……家に入れへんから」と呟いた


「え?なに??」


顔をあげた理一をまっすぐに見て、もう一度

「もう、アタシの家に来んといてってゆってんの」

「なんでだよ」

「アタシが彼女やったら、自分の彼氏が他の女の家に出入りしてんのイヤやもん」

アタシの目をじっと見てかたまった理一に手を振る

「だ・か・ら、来ても入れてあげな~い」

「なんで、彼女持ちの方が安心だろ?」

「何が」

「彼女いねー男なんかあげてみろ、一瞬で狼に変身すっぞ?」

「今まで散々上がりこんでたお前がいうなッッ!」

「だから、簡単に男あげるなよ?」

「うるさい!!」


アタシは理一の脇を通って玄関のドアを“出て行け”といわんばかりに勢いよくあけ……ようとしたんだけれど

ゴリッという音が響いてドアが少ししか開かなかった

ちょうどドアの前を通りがかった人をドアで強打したらしい……


「あ、すいません、大丈夫ですか?」


中年のおじさんが逃げるように去っていくのを見て、覗き込んだ理一が「痛そう~」とボソッと言った
アタシも気まずくて一旦ドアを閉める


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