ブランコ
―――…
俺達は各々帰りの準備をしていた。
俺は黙々と。
成瀬は携帯をいじりながら。
そして俺は自分の帰りの準備が終わったから、いっくんに言われた、蒼空に渡すプリントを教卓に取りに行った。
そのとき
「あのさぁ」
成瀬がずっと見てた携帯の画面から顔を上げ、話しかけてきた。
「彼方さぁ、ヤじゃないの?」
「なにが?」
「か…神崎サンちに行くの」
「別に」
「…あっそ」
成瀬は小さくぶつぶつと納得いかなそうになんかつぶやいた。
そして急に顔を上げて
「あ、てさか!無理でしょ、行くの?」
成瀬は“そうだよ!"と言って俺を見た。
「家、わからなくない?」
「俺、知ってる」
俺がそう答えると、成瀬の顔が曇った。
「は?何で知ってんの?」
「……あのさ、そこまで言うなら別、俺1人でいくけど?」
なんかイライラくるわ、この女。
そこまで嫌ならいかなくていいし。
てか、こないでほしいし。
「…え…?」
「……」
成瀬の戸惑ったような声を俺は無視した。
そのとき
「彼方ぁー?まだ行っとらんかったん?」
咲斗が教室に入ってきた。
「…まぁな。そいつが行きたくねぇっつーから」
俺が成瀬の方をあごでしゃくると、咲斗は“おっなるチャンや”と成瀬の方を向いた。
「えーなんで?なるチャンいきたくあらへんの?」
「だって、こわいじゃん!!なんか。うち、抵抗ない彼方の方が不思議!」
成瀬は口をとがらせて俺を見た。
「あ゙ーそれは…」
「えー?俺はなるチャンの方がフシギ」
俺がどもるとすかさず咲斗がおどけた風に言う。
そして
「ま、教室で話ししててもしゃーない。なるチャン、彼方、とにかく行こか」
咲斗はそう言ってすねてる成瀬を強引に一緒に連れて行った。