ブランコ
ー彼方sideー
「いないんじゃないの?」
横から成瀬が言う。
俺が2人に蒼空の家を案内すると、2人共思った通り“高校生が1人でマンション住み…!!”と驚いた。
そして蒼空の部屋の番号をマンションの管理人さんに聞いて、さっきからインターフォンを鳴らしているんだけど…。
「いるはずなんだけどな…」
いないはずはない。
…居留守はありえるけど。
3人で少々不安になりながら、玄関のドアが開くのをじっと待つ。
――と、そのとき
玄関のドアがスッと開いた。
「――――誰?」
ドアの隙間から見知った顔、蒼空が怪訝な表情をしながら顔を出す。
“!!”
そして俺達の見たとたん、すごく驚いた顔をして、次の瞬間
思いっきりドアを閉めようとした。
でも
「ここが蒼空チャンちかぁ。じゃまするで☆」
そうなることを予想していたんだろう咲斗がすばやく反応してドアに手をかけ、大きく開いた。
そしてまぁ、ふてぶてしい態度で蒼空の了解も得ず、ずんずん中へ入っていった。
成瀬もそれを気にする風もなく、咲斗についてさっさっと部屋に入っていった。
「お…おい!お前らッ!!」
俺は慌てて2人に声をかけるけど、聞こえていない。
俺はあきらめて、蒼空に視線を移した。
すると、蒼空が口を開いた。
「――…何しに来たの?」
「―――――いっくんに頼まれて…プリント届けに……。…………っと蒼空!!」
俺は思いっきり頭を下げた。
「…この間は、ごめん」
「……」
……一時、沈黙がおりた。
俺はこの沈黙が永遠に感じられた。
蒼空がどんな顔をしているか見たかったけど、怖くて顔があげられなかった。
頭を下げながら、ズボンをギュッと握る。
すると、蒼空が口を開いた。
「別に」
………フッ。
俺はちょっとだけ“そっけな…”って思ってしまったけど、一応は許してもらえた(?)から安心して顔を上げ、
「ありがとう」
と、笑って蒼空に言った。