ブランコ
「――――人形、殴りに」
……蒼空の口からでたのは、この上なく残酷な言葉だった。
でも俺は、その言葉なんかよりも、それをもう慣れたようにたんたんと言った蒼空の声を聞いた方がつらかった。
「――つまり、その人形は蒼空チャンで……ということやな……?」
「…………………ん」
その声を聞いた瞬間、無意識に俺は手を握りしめていた。
だってその時、初めて聞いたんだ。
蒼空の震える声を…。
静かな空間に成瀬のすすり泣く声が聞こえる。
咲斗は目を閉じて難しい顔をしている。
重い沈黙が肩にのしかかるそのとき
「それでやな。その傷」
納得したような咲斗のつぶやく声が聞こえた。
…咲斗も気づいてたか。
今日会ったとき、一番最初に目についた体中のあちこちにある痛々しい傷。
口には出さなかったけれど、ここまでたくさんあると気づかない方がおかしい。
「………そんな……こと、あったなんて……」
成瀬がうつむき、つぶやく。