ブランコ
「――同情なんて、いらないから」
一瞬、誰が言ったか分からなかった。
ハッとして蒼空を見る。
その声はさっきと同一人物とは思えないほど冷たくて、眼差しも表情も鋭く、侮蔑の色がこもっていた。
全員言葉を失う。
そんな中
「……心配だった……だけで」
成瀬がつぶやいた。
俺はしまった、と思い蒼空を見る。
今の言葉は言っちゃいけなかった。
…そして思った通り、蒼空が爆発した。
「…心配?ふざけんなよっ!頼んでないそんなこと!都合のいいときだけ見方面しないでっ!!…どいつもこいつも口だけはそういう事いって…あたしがいざ助けてって言ったって他人の振りして笑って見てみぬ振りするくせに…。 そんなんだったら最初からあたしに構わないでッッ!」
悲鳴のような声で蒼空は叫んでいた。
というより、悲鳴だった。
蒼空の身体も心も、すべてが悲鳴をあげていた。
なんて大きな傷を背負ってんだ…。
とうてい俺達の理解の範疇をこえている。
俺は蒼空の哀しみでいっぱいの目を見つめた。
…見つめることしかできなかった。
今、蒼空に言葉を掛けられるほど、かける言葉を見つけられるほど
俺は大人じゃなかった。
…悔しい。
めちゃくちゃ悔しい…。
俺は蒼空を助けたいのに。
俺は蒼空を救いたいのに。
なにも…なにも
何一つ、してあげられないなんて…。