ブランコ
勉強会
外から風がやわらかくふき、肌をなでる。
制服が長袖から半袖へと変わり、窓の外の景色も緑が濃くなってきた。
そんな暑くもなく寒くもない一番過ごしやすいこの時期に
「あ゛ぁー…テストむ〜り〜〜」
学生に立ちはだかる壁、中間テストがやってきた。
担任がドのつくめんどくさがりなので、席替えはやってるはずもなく当初のままだ。
よって、私の隣はまだ彼方だ。
「なー…咲斗…俺どーしよ…」
「あきらめやぁ」
真面目に悩む彼方に咲斗はあっさりそう告げる。
テストは再来週から。
中間だからそれ程範囲も広くないし、難しくもない…はずなんだけど。
「ちゃんと答えろよー…」
彼方は細い声でそう言い、机にあごをつけた。
読んでいた本からチラリと視線を彼方に向ける。
この頃、少しだけ日常が変わった。
朝、必ず彼方、咲斗、綺亜羅の3人が
“おはよう”と言ってくる。
休み時間、前は教室中の喧騒が嘘のように私の周りだけ静かだったのに、今は彼方や咲斗のたわいもない雑談が聞こえてくる。
というより、この2人は私にも聞こえるように話しをする。
この頃は綺亜羅も圧倒的にここに来ることが多くなったし。
話しの内容といえばあってないようなものばかりだけれど。
でも、人の声が聞こえてくる。
わたしのものじゃない他人の声が私に話しかけてくる。
ただそれだけで前よりいろんなものが少しだけ暖かく見えるようになった。
学校の雰囲気や外の景色。
本の活字でさえも。