ブランコ
「あ…でもさ、そんな天才が近くにいるって、逆にラッキーじゃない?」
「…なんで?」
「勉強教えてもらえるじゃーん?」
綺亜羅がニヤリと笑うと、それまで沈んでいた彼方の顔が輝いた。
「そっか!蒼空が教えてくれれば、俺もう赤点とらないですむ!」
「彼方、話し早すぎや。……で?ええか?蒼空チャン」
そう咲斗が言うと、一斉に3人からキラキラと(うそくさい)涙目の視線が向けられる。
……はぁ。
しょうがない…。
めんどくさいけど、たまにはいっか。
私はそう思って、
「…いいけど」
そう答えた。
「よっしゃ!さんきゅ蒼空」
「ありがとね☆」
「おおきにな。蒼空チャン」
3人とも一気に笑顔になった。
やっぱりさっきの涙目はうそだな…。
もう泣いてた跡さえのこってないもんね。
「それじゃあさ、明日ちょうど土曜日だし、どっかで一緒に勉強しよ?」
早速、綺亜羅がそう提案する。
「いーよー。で、どこにすんの?」
「…やっぱ、ここは誰かの家でしょ」
綺亜羅がそう言うと、彼方と咲斗がだまって頷いた。
「彼方ん家は?」
咲斗が聞くと
「俺んちは…兄貴と姉貴いるから…。ってか、俺の部屋4人で勉強できるスペースない」
彼方は手でバッテンを作ってそう答えた。
「咲斗んちは?」
「んー…。たぶんおかんおるやろうからな…ねぇチャンもおるかもやし。…無理やと思うわ」
「そっか…」
綺亜羅がそうつぶやくと、今度は咲斗が
「なるチャンはどうや?」
「うちは…親はいないけど…妹いるから…うるさいよ」
「そっか…やっぱり集中できるとこやないとな…」
3人が無駄に大袈裟にため息をつく。
…結局そうなったか。
私は内心やっぱりなと思いながら、次に来るであろう言葉に少し身構える。