ブランコ
そうやってについて遊んでいると突然、
「ママー?見て、お空きれぃだよぉー!!」
女の子がブランコに乗って不安定に片方の手を離しながら、空を指差しそう言った。
「うん。そうだねぇ。きれいだね」
母親は優しい声音でそれに答えた。
たわいもない会話。
それを私は必死に聞かないように
振り向かないように
こらえた。
振り向けば泣いてしまう。
暖かさも優しさも知らない私は
虐待が当たり前だと思っている私は
あんな暖かな空気に触れるだけで泣いてしまうだろう。
一時して、声が聞こえなくなったと思った私は、ためらないながらも後ろを振り返った。
さっきまで女の子が座っていたブランコに人影はなく、
公園の外に目を向けると、女の子がお母さんと楽しそうに何かを話していた。