星、流れ
8月12日、晴天。

充電3個。

……完璧。

「ごめんね、足に使っちゃって」

「良いって。ライブかぁー、俺も行きたかったんだよなぁ」

そう言って前のバイト先の友達、拓真が運転席でハンドルの上に顎を置く。

「チケット取れなかったの?」

「バイトのシフトが空いてなかったんだよ。なのに、昨日になって急に後輩に休み交替して欲しいって言われてさ……」

可哀相だろ?と、目だけで見る。

そんな拓真に苦笑しつつ、私の頭の中は一週間前の事でいっぱいだった。




その日、和歌と別れてから着信があった。

『もしもし、電話……大丈夫?』

声のトーンがいつもと違う。

メールでは普通だったのに……どうしたんだろう。

「うん。大丈夫……ゴメンね、急にライブなんか誘っちゃって」

『ううん……嬉しかった。俺、さ?』

「うん?」

無言。

聞こえるのは、私の鼓動。

鼓動が大きくなるのにつれて、不安も膨らむ。

やっぱり……迷惑だった?

私と逢うのは、嫌?

視界が歪んだ。

……息が詰まる。

『菜々の事、好きなんだよね』

やっと聞こえた光哉の声に涙が零れた。

震えそうになる声を抑えながら相槌だけしか打てない。

家路に向いていた足が止まる。

光哉が何を言ったのか理解出来ない。



好き……?



光哉が、私の事を?

『本当はライブで逢った時に言おうとしたんだけど……。俺、かっこよくないしさ。逢った時の菜々の反応が怖くて……』

電話越しに光哉の緊張が伝わる。
その緊張からか、だんだんクリアになって行く視界。
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