星、流れ
『……逢ってみて、気持ちが変わらなかったら付き合ってくれる?』
頭を抱えて黙っている私に光哉が哀しそうに言った。
そんな声を聞いて出る私の応えは、考えとは反対のものだった。
「……うん」
薄暗いアパートの階段に、私の声が静かに響いた。
「おぉー!人すげぇな!!……菜々?」
「えっ?!あ、そだね」
一週間前の事を思い出して上の空だった私は拓真の声で我に返った。
「お前、今から楽しむってのにおかしいぞ?何かあったか?」
心配そうに眉を寄せる拓真に首を横に振る。話すと長くなりそうだったから。
心配そうな拓真に、無理矢理笑顔を見せてから車を降りた。
あの日から光哉のメールは変わり、毎日の様にラブメールが届いていた。絵文字もハートが増えた。
……それが余計に気持ちを重くした。
『好きだよ』
それに対して、私は『ありがとぉ』と返す。
『俺の事嫌い??やっぱ逢うまでは付き合えない??』
それに対して『好きだけど、逢ってみないと分かんないよゴメンね』と返す。
卑怯な私。
和歌に話すと「やっぱりね」と返って来た。
あの日告白されるだろうと予想していたらしい。
だからあんなにキラキラしていたのか、と溜め息をついたのは言うまでもない。
和歌の予想外だったのは、私の気持ちが冷めた事だった。
それは私自身も予想外な事。