死に神と俺
そう簡単にはいきませんよね
「とりあえず、馬鹿なうえに冴えなさそうなてめぇに説明してやる」
少女は俺の胸倉を放す。次に俺を至近距離で指差し、ズカズカ勝手なことを言って、上から説明だとかなんか言い出した。
「とりあえず。…木下真理佳は昨日、5月13日、16時23分53秒に確かに死んだ」
「…知ってるよ、そんなに詳しく言わなくても」
「人間の死ぬ時間や死に方ってのは、この世に生を受けたときから決まっていることなんだ」
少女はどこからか分厚い辞書を出して、それをパラパラめくりながら説明する。なんだかこれじゃあ本当にこいつがあっちの人間みたいだ。
「まあ、ようするに事故死する奴、自殺する奴や安楽死する奴まで。人間はその決められた死に向かって、その死に向かった人生を歩んでるわけだ」
「……じゃあ、木下の、死は」
「まあ、産まれた瞬間から決まってたんだよ」
少女は冷たく言い放ち、俺に辞書の中身を見せる。そこには木下の顔写真と、死んだときの状況からなにからすべて書いてあった。
…なんて悪趣味な辞書なんだよ。
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