死に神と俺
「だから、その人間の死を変えるってのは容易なことじゃねえわけだ」
「でも、できるのか?」
「…できねえことはねえ、だが成功例もねえ」
木下を生き返らせられるかもしれない。目をきらめかせた俺を見て、少女は頭をかいた。
「そんなことを誰でもできたら、この世が上手く回らなくなるだろ。…その一人が死ぬことで、産まれなくなった命もあるし、繋がるはずだったものも、なにもかもが消えるわけだ」
「……一人で?」
「そこで一人死ぬからこそ、この先ジジイが定めた世界が上手く回るわけなんだよ…わかんねえよな?」
「わかんねえ」
「…つまり、誰かが死ぬことで、誰かが生きてる。たった一人の命が世界を簡単に変えるんだよ」
「……………」
「だから必ず昨日のあの時間に、木下真理佳は死ななくちゃいけねえんだ。世界の為に」
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