死に神と俺






難しい、だけどなんとなくわかった。木下は最初からあそこで死ぬって、決まってたんだ。だけど



「……木下は、戻れないのか?」


「ああ、本当ならな」


「本当なら?」


「だから、木下のそこで死ななくちゃいけねえ『運命』を変える程の代償だ必要なわけだ」



少女は辞書を閉じると、俺の肩を掴んだ。



「てめぇ、木下真理佳の為にどこまでできる?」


「え、」


「ただで人間の願いなんて、簡単には叶えられねえよ。誰しも知らないうちに代償を払ってるんだ。ましてや人間の『運命』を変えるなんて」



そう言われて今更気付いた。確かに、人を生き返らせてほしいなんて普通じゃ叶うわけない。


俺は木下に生きてほしいと思う。すきだから、関わりさえちゃんとは持てなかったけど、大切だから。木下の走る姿程、俺に衝撃を与えたものはないと思う。それに出会うまで、ただなんとなく生きていた気がするから、だから



『高根沢くん』



最後に木下が俺を呼んだことは、きっと俺の運命を変えるくらい重大なことだった気がするんだ。



「俺が死ぬ」


「…は」


「だから、俺があいつの代わりに死ぬ」




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