死に神と俺
「てめぇ、案外可哀相な奴だよな」
声が聞こえた。だけど体は鉛みたいに重たくて動かない、頭はズキズキ痛くて、うっすらまぶたを開くのがやっとだった。なんだここは、白い天井に冷たい空気、腕から点滴が伸びてる…病院か?
その声に聞き覚えがある、この口の悪さは。ベットサイドに視線を向ければ、あの死に神が居た。
「そんなにあの女が大切なのか?」
大切に決まってるだろ。…そう言いたいが、声が出ない。だけど少女は…死に神は、俺の思ってることが分かるらしい。
「大切、なんて所詮綺麗事だと思うがな」
『うるせーな』
「だが、人間は面白いな。…てめぇみたいなのも居る」
『まじで口悪い』
「まあ、ジジイに殺されねえように、精々頑張れよ」
俺の薄い視界が、死に神の手で遮られる。
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