死に神と俺







そう言って、今度こそ海の体を俺から放す。顔を覗き込めば、なにかを考え込んだような海の表情があった。



「優人は、いつだってそうだよね」


「は?」


「いつも大人ぶって。…いつだって、卓也の友達のいい先輩気取り」


「気取りって、お前」


「海は、もうそんな子供じゃないよ。…だから、ここに来た意味くらい、優人なら分かるでしょ?」



俺のパジャマの裾を軽く掴んで、蝦が鳴くような声で呟く海に、思わず心臓が跳ねた。


だけど、俺は海の気持ちは受け取れない。気付かない振りなんて狡いのはわかってる。



「海、もう暗くなる。…帰れ」


「優人…」


「な、…家族が心配するぞ」



宥めるように、海の頭を撫でて。次に両肩を掴み、ドアに体を方向転換させる。


すると、海は肩を一度上下させ、ゆっくりと一歩を踏み出す。



「じゃあね、優人。…また来る」


「ああ、じゃあな」



海はそう言うと、ドアを静かに開き、出ていく。あー、俺ってもしかして最低か?




.
< 33 / 41 >

この作品をシェア

pagetop