死に神と俺
そう言って、今度こそ海の体を俺から放す。顔を覗き込めば、なにかを考え込んだような海の表情があった。
「優人は、いつだってそうだよね」
「は?」
「いつも大人ぶって。…いつだって、卓也の友達のいい先輩気取り」
「気取りって、お前」
「海は、もうそんな子供じゃないよ。…だから、ここに来た意味くらい、優人なら分かるでしょ?」
俺のパジャマの裾を軽く掴んで、蝦が鳴くような声で呟く海に、思わず心臓が跳ねた。
だけど、俺は海の気持ちは受け取れない。気付かない振りなんて狡いのはわかってる。
「海、もう暗くなる。…帰れ」
「優人…」
「な、…家族が心配するぞ」
宥めるように、海の頭を撫でて。次に両肩を掴み、ドアに体を方向転換させる。
すると、海は肩を一度上下させ、ゆっくりと一歩を踏み出す。
「じゃあね、優人。…また来る」
「ああ、じゃあな」
海はそう言うと、ドアを静かに開き、出ていく。あー、俺ってもしかして最低か?
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