死に神と俺
「う、…ぐす、……優人の馬鹿…、」
俺は、閉じたドアの前にしゃがみ込み、静かに涙を流す海に、気付くことなんてなかった。
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日も暮れて、俺はただただ溜息しか出なかった。布団に包まり、考える。
海の気持ちには答えられるわけがねえし、しかも木下は天然で鈍感過ぎるし。
「よう、腐ってんな」
「……………死に神か」
「私はルルだ、そんな呼び方やめろ」
「…ルル、俺、もしかしてめちゃくちゃ無謀なことしようとしてるわけ?」
またいきなり現れた死に神、ルル。俺のベットサイドの椅子に足を組んで座り、辞書をペラペラめくった。
「橋本海は、本当ならお前の結婚相手になる女だ」
「…………は」
「だから、橋本海は立ちはだかるぞ。元お前の『運命』の相手だからな」
頭を抱えずにはいられない。な、なんてすごいこと簡単に言うんだ。
「う、海が…」
「まあ前途多難過ぎて、笑えるくらいだけど。頑張れよ」
「はああああ〜…」
頭を下げれば、また頬に手を当てられる。…ルルはなんでこんなに俺に触るんだ。
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