死に神と俺







「ダメだよ、」


「海?」


「…こういうのは、ほんとに好きな人としなきゃ、ダメなんだよ?」


「…………お前、マジでどうした」


「優人が、そう言ってた」



優人、遠回し過ぎだ。っていうか、こいつはいつになったら俺の気持ちに気付くんだ。


俺は狡いのかもしれない。海の幼なじみっていう立場を利用して、抱きしめたり、いつも側に居て。いつまでも気持ちを伝えずにいたから、だからバチが当たったのか?



「…いいんだよ、俺は」


「卓也?」


「俺は、お前が、」



好きだから。その言葉は、俺の胸の奥の奥に、吸い込まれた。やっぱり俺は臆病で、狡い。それを言ったら、海と居られなくなるのがわかってるから。


伝えられなかった変わりに、俺はさっきよりも強く海を抱きしめた。海はいつもと違う俺に気付いたのか、怖ず怖ずと、いつものように俺の背中に腕を回した。





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