死に神と俺
薬臭い室内を進み、脇のカーテンを開き、ベッドに横になる。校内はまだざわついてる。
木下、まさかそんな。怖くなり、思わず目を閉じた。あのとき、俺があの二人を止めていたら、少しは違っていたのか?最後に見た木下の表情が忘れられない。
「真理佳、嘘みたい」
「昨日まであんなに元気だったのに」
女子の声が聞こえた。保健室の前で話してるんだろう、…なんでこんなところで。
「可哀相、なんで真理佳が」
「…陸上の大会も近いからって、すごく頑張ってたのに」
走る木下を思い出した。地面を蹴って、風を切って、誰よりも速く走る彼女。
俺はベッドから、むくりと起き上がった。なにしてんだ、俺は。
「木下、」
俺は、木下が好きだ。過去形ではない、だから、
ベッドから降りて、保健室を勢いよく飛び出した。
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