死に神と俺
保健室の前に居た女子を掻き分け、廊下を走った。もう人気はほとんどない。
教室の前を通り過ぎ、下駄箱で靴を履き変え、また走る。そして、
「……はあ、」
肩で息をする。着いたのは、昨日最後に木下を見た場所だ。
そこには花束が供えてあって、俺はやっと実感する。
「木下、…きの、した…!」
涙が頬を伝った。話したこともそんなになかった、いつも遠くから見てるだけだった。だけど彼女の笑った顔、走る姿、全部魅力的で、憧れで、
最後の最後で名前を呼んでくれた。だから俺は、馬鹿みたいだけど、木下を諦められない。
「…畜生、」
俺は座り込む。地面の土に爪をたて、涙でぐしゃぐしゃの顔で声を荒げた。
「なんで木下なんだよ!!」
なんで、
「……神様でも、死に神でも、いいからよ。…木下を生き返らせてくれ…!」
また彼女に、走らせてやってくれ。
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