13月32日と25時の昼夜
 両親の忠告を無視して購入した黄色の携帯電話。

 でも、友達が白や黒の携帯電話に、華やかで大人っぽいデコレーションをしているのを見た瞬間、
黄色の携帯電話がつまらないものに思えてしまったのだった。


 こんなに飽きっぽい私でも、高校で出会って恋した彼とは、大学生2年の現在まで4年続いている。

 顔も好みだし、ピカピカの乗用車で毎日送り迎えしてくれる。

 だけど正直、顔も車にも見飽きていて、ドキドキもしないし、ずっと傍にいたいとも思わなくなっていた。


 そこに現れたのは、キラキラの赤い外車を乗りこなす、年上の学生。

 顔は平凡だけど、服のセンスもプレゼントの趣味も最高。
 彼に交際を申し込まれた私は二つ返事でオーケーし、その日のうちに4年付き合った男のアドレスも写真も全て捨てた。

 危険な香りにも惹かれるし、囁かれる愛の言葉にドキドキしたから。
 それに、デートの度に高級車の助手席に乗れるし、高価なアクセサリーをくれるなんて、最高!


 ……でも、親友の彼が親友の誕生日に手渡しした綺麗な花束……

「お前に出会えて、俺、幸せだよ」

 あれを渡す時の彼の赤らんだ真面目な顔や、


「私も。ありがとう……!」

 と涙ぐむ親友の顔には、愛が溢れていて、ちょっと空しくなった。

 だって高価な物より安い花束の方が、更にいえば、危険な香りより、包み込む愛情の方が、私はどうしても欲しくなってしまったから。


「──ってことがあったの。ね? 素敵な人でしょ?」


 さっそく彼氏に話したら、


「君のことは、ちゃんと知ってる。君が欲しいというなら、何でもあげるよ」


 ──そう言ってくれた彼が出したのは、光輝くダイヤモンドの指輪。


「美香、君に会えて幸せだよ」


 その指輪を受け取って、私はめでたく彼と結婚した。
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