13月32日と25時の昼夜



「タルさんの家に、珍しい大蛇がいるらしい」


 そんな噂がたっているのは、住民100人の小さな村だった。

 不思議なことに村人はきっかり100人で、101人でも、99人でもない。ちょうど100人の小さな村。
 電気もガスも通っていない、小さな小さな村だ。

 そこに先日、101人目の村人としてやってきたのがタルという男で、彼と入れ替わるようにして老人が旅に出て行った。

 だから、タルは100人目の村人となったのだ。


「で、その大蛇ってのは、どんな蛇なんだい?」

「それが、分からないんだ」

「分からないだって? チャリさん、あんた見たんだろ?」

「ああ、タルさんの家に行って、見て来たよ。ただ、その蛇は壺の中に入ってて、なかなか外に出ようとしないんだ」

「壺の中を覗けばよかったろう」

「覗いたさ。覗いたけど、真っ暗で良く見えないのさ」

「なら、手を入れてみればよかったろう」

「入れようとしたさ。でも、タルさんに止められた。臆病な蛇だから、万が一噛まれて毒が回るといけないからってね」

「臆病なのはチャリさんの方じゃないか」

「そんなに言うなら、アクさんがやればいいだろう」

「よし、やってやろう」

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