君だけのもの。
過去
青く澄み渡った雲ひとつない
ある晴れた日。
この空と真逆の心境の
私がいた。
「お願いします」
目の前にいる黒ぶちの眼鏡を
かけた男に
白い一枚の紙きれが渡された。
「りお…ほんとにいいのか?」
「うん。
もう後悔はないよ」
「…そうか
残念だな…
元気でいろよ」
「いままでありがとうございました。
先生またね?」
「…おう」
振り返って担任の顔を見たとき
一粒の涙がこぼれたのを
私は見逃さなかった。
つられて涙が出る。
悔しい。
この涙が見られないうちに
私はその場を去った。