死神と少女
序章にて終焉
呪いを使う魔女は恐れられ、
傲慢な女王は人々の反感を買い、

そして 人に死をもたらす死神は忌み嫌われる―――。



俺は好きで死神やってるわけじゃない。
誰が好きこのんで人の魂を狩りに行くかっての。

気が付いたら俺は右手に鎌を持って突っ立ってたんだ。
これは俺に運命付けられてんだ。
…そう信じるしかない。



「今回はあのコか」


きったねー灰色をしたコンクリートの病棟の窓から、弱々しそうな女が顔を覗かせた。

…まだ若い。

俺が今まで狩ってきたのは ヨボヨボの老いぼればかり。
この若さで死ぬなんて ツイてねぇな。

俺は病棟の外壁を歩く。
俺と違って人間は 重力とかいうもので、水平な場所しか歩けないらしい。

4メートル程歩いた所で、
その女がいる窓辺に辿り着き、部屋の中に降り立った。


「…だれ」


ふと横のベッドに目をやれば。
日光に当たらないせいか肌が青白く、それでいて長い髪だけは黒々と艶めき立つ少女が
俺を、その双眼でしっかりと捕らえていた。




「俺が見えるのか」
「ちょっとぼやけてるけど、うん。」


…げ。


たまにいるんだよな、こういう特殊なやつが。
通常の人間が見れない存在を見ることが出来る力を持ったやつ。


「俺が何だか、わかるか?」
「大体はね」

目の前の女は突如に現れた俺に臆することなく、むしろ微笑みながらこう言った。

「あたしもうそろそろ死ぬんでしょう?」


俺は目の前にいる女の一言に
固まった。

「死ぬのが怖くないのか?」

「なんで怖がるの」

女はさも不思議そうに首を傾げる。
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