その透き通る手で
第一章 遮断機の君

赤い信号が点滅を始めたのを遠くに見て、
わたしは更にスピードを上げた。



――間に合え、間に合え!



だけどそんな祈りもむなしく、遮断機は無情にも、わたしの進路をふさいでいく。



時刻は既に、9時37分。
……完全に遅刻だ。


踏切待ちの人影は、当然のようにゼロ。
肩で息をするわたしがぽつねんと立っている。


目の前には、世の学生たちの敵・開かずの踏切。一度降りたら10分は上がらない魔の黄黒ポールだ。


電車は・・・・・・まだあんなに遠く。


――よし、ここはいくしかない!


わたしはスカートの裾を気にすることなく、ひょいと上げてポールをまたいだ。
このままダッシュでいけば、余裕で反対側に辿り着ける。


そう思った。
だけど。
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