その透き通る手で


多分、それは本当なんだって思う。

付き合ってるっていうのは嘘。

六川先生と、図書委員長の眞井。ふたりが一緒にいることは多くて当たり前。

なのにそんな眞井に嫉妬して流れた悪意のある噂だったんだ。



でも――



眞井は、本当は好きなんじゃないのかな?




「ん? なにじーっと見つめてるの?」

「ううんっ、なんでもないよ」



わたし、頼りないのかな。

悩みごとを打ち明けられないくらい、信用ないのかな。


……そう思ったら、また言葉を飲み込んじゃうんだ。



「あっ、ごめん! ちょっと電話! すぐ戻るから待っててね!」


ブルブル震える携帯を両手で大事そうに抱えて、眞井はいずこかに走っていった。


「……別に、ここで電話してもいいのになあ」

「ん? 誰のこと?」




へ?


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