その透き通る手で
電車の位置を確かめようと、ちらりと右に顔を向けると。



……うわ。見てる。


ものすごく見られてる。



いつの間に立っていたのか、そこには同い年くらいの男の子がいて。
なにやら面白いものを見つけたような顔をして、わたしのことを見つめていた。


「そんなに待ちきれない?」


口元をふっとほころばせて、笑う。
その仕草と、耳を打つ声に、一瞬息が止まってしまった。



ドキッとさせられる、綺麗な声。
大人びた表情。


……同い年くらいの、はずなのに。



「だって、もう授業始まってるよ?
普通急ぐでしょー」


なんだか照れくさくて、わたしはうつむきながら、言い訳がましく呟いた。


「寝坊したんだ?」

「目覚まし消して、二度寝してたの」

「うわ、それは救えないなー」
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