その透き通る手で

「褒めてるんだよ! それに23歳もレンも、全然オジサンじゃないよ」

「そりゃどーも。
あ、あと俺、絵描きね。今、日本放浪中」

「え、絵描き?」

「画家って言った方がしっくりくるかな?
大学出て、今は武者修行中」


む、ムシャシュギョウ?


……駄目だ、全然想像つかないよ。
絵描きさんの武者修行って、どんなの?


レンは多分、冗談を言ったつもりはないんだろうな。
ちょっと嘘っぽかったけど、ホントに日本を放浪してるんだ。


「なんか、すごいんだね」

「すごくねーよ、全然。親父の七光りだって言われたくない一心でもがいてるなんて、カッコ悪い」


ちょっとだけそっぽを向く素振りをした。


すねた顔したレンは可愛くて、頭を抱きしめてぎゅーってしたくなるくらい。



くるくる変わる表情に、わたしはずっとときめきっぱなし。


「……お、えらい。そこで『えーお父さんって有名な人なのー? 誰々ー?』とか聞いて来たら、清にゲンメツするところだった」


あ、危ないー!


よかった、レンに見とれてて質問どころじゃなかったから。

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