その透き通る手で


そう。普通に通りかかることって滅多にないような場所なのに、レンが現れたことに驚きなんだよ。


「……え?」


他愛もない質問だったはずなのに、その時レンの顔からはじめて表情が消えた。


虚をつかれたってこういうことを言うのかなっていうくらい、困ってしまったように見えたんだ。


「あ、もしかして絵を描きに来たの? ここは特に夕焼けが綺麗だもんね」

「そうそう! 絵! 絵を描きに来たんだよな、俺。ちょっとど忘れしてた」


……なんか、嘘っぽい。
誤魔化し笑いが不自然すぎるよ、レン。

本当の理由を言いたくないのかわからないけど……


なんだか、様子が変。


さっきまで、無邪気ってくらい楽しそうにしてたレンは、すっかりどこかに引っ込んでしまったみたい。


「……ごめん、悪い。俺帰るわ」

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