その透き通る手で
笑い声で紡がれた台詞に『他人事だと思って!』なんて噛み付こうとすると、


「まっ、ここまで遅れたら5分も10分もおんなじだって。
俺も一緒に待ってやるから、大人しくしてなさい」


なだめるような優しい言い方に、すっかり言いくるめられてしまった。


……なんだろう。この人。謎すぎる。


「名前は?」

「へっ?」


突然の質問に面食らうと、男の子は小首を傾げてみせた。少しくせのあるこげ茶の髪がサラリと揺れる。


「これから10分ちょい話相手するのに、名前も知らないって変じゃん。
ほら、なんて呼べばいい?」


当たり前のようにうながされて、わたしはついつい流されて答えてしまう。


「仲江……清」

「清(サヤ)、か。へえー」

「そっちは?」

「ん、俺? レン」


条件反射で尋ねたら、なんだかカッコイイ名前をサラッと口にする。

でも、レンって顔じゃないかな。

切れ長な目をした、クールな男ってタイプなら似合うだろうけど、レンは明らかに可愛い系の顔だし。


……さっきちょっと笑った顔は、男っぽかったけど。
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