その透き通る手で
 レンも案の定驚いて、視線をさまよわせながらうーとかあーとかうなってる。

 困ってるんだろうな。ものすごく困ってるんだろうな。……さっきの台詞、飲み込んでしまえたらよかったのに。


ようやく言葉を見つけたレンは、真面目な顔をして言った。いつもの歌みたいな発音で。


「悪いけど、今日は遠慮しておく。夜遅いし、ご家族にも迷惑だから」


 マニュアル通りの答えに、ガンと頭を殴られたような気がした。

 ……もうちょっと、気持ちのあるのが聞きたかった……内心がっかりするわたしに、レンは続けた。


「第一、絶対印象悪くなる。急だし、遅いし。清の家族に『あんな男と付き合うのはやめなさい!』なんて言われたらと思うと立ち直れない」


 歌の続きは、とてもわたしに優しかった。


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