その透き通る手で
「また今度出直すってことで、勘弁してよ。な?」

「……うん」


 本気かどうかもわからない。だってレンは、ケータイの番号も聞いてこないから。

でも、今ここにある言葉やレンは嘘じゃないって、わたしはそう信じてる。
心細い夜道、送り届けてくれたことは本当だから。だからそれでいいって思えたんだ。


「それじゃ、またな。おやすみ」

「おやすみ、レン。またね」


 門の所で、レンが街灯の向こうに消えるまで、わたしはずっと見送った。もしかしたら、レンが振り返るかも知れないから。

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