その透き通る手で

「あれ、まだいたんだ。早く帰らないと晩飯抜きだぞー」


 街灯の真下、スポットライトに照らされるみたいな位置で立ち止まったレンは、手で追い払うジェスチャーをしてみせた。


「はーい」


 よい子の返事に満足したのか、レンはにこっと笑って暗がりの中に歩いて行った。

 さっきまで確かに感じてたあったかいものが、ふっと音も余韻もなく消えてく。



――あ、わかった。

レンに感じてた不思議な感覚。


まるで風みたいなんだ。



きまぐれで、時々やさしくて、たまにいじわるするみたいにふくところとか、そっくりだ。



 ……あと、あまりにもあっさり吹き去ってしまうところも。



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