その透き通る手で

「仲江、おまえ今、困ってることないか?」


 困ってることって聞かれても。
 わたしと眞井は、思わず顔を見合わせた。

こんなに歯切れの悪い長谷君も珍しいな。
いつも堂々として、どんなことがあっても揺るがない人なのに。


 長谷君本人も、何を言っていいか図りかねてるみたいで、言葉を探すように少しだけ口をつぐんだ。


「長谷君……?」

「おまえ、なんかどっか抜けてるから、年中困ってそうだけど……いや、なかったらいい。あるような気がしただけだ。
邪魔して悪かったな」


 一方的に話を締めくくって、すたすたと離れて行ってしまう長谷君。

 ……なんだったんだろう。いったい。

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