その透き通る手で
「初めてあの踏切で会った時から、俺には清といた時間しか記憶にない。気がつけばいつも、清の前にいたんだ。それより前の記憶はどっかあやふやで、正直俺、自分の名前も満足に思い出せない」
「でも……でも、自分のこと絵描きだって、23歳で、日本を旅してるんだって言ってたじゃない」
「清に聞かれたから、思い出せたんだよ。記憶がはっきりしないから、正しいかどうかなんて本当はわからないけど」
寂しそうに言って、レンは目を伏せた。