その透き通る手で

 多分、説明したら素直に聞き入れてくれるんだろうなって、漠然と思ってたんだと思う。
 でも、あいにくわたしはそんなに聞き分けのいい子じゃない。


「ヒトの前に勝手に現れて、何も言わずに勝手に消えて! また会いたくなって探してもちっとも現われてくれないし! 気まぐれみたいに姿を見せて、気まぐれに人の心を持ってかないでよ、この卑怯者!」

「ひ、卑怯者って……清」

「生身の身体があったら、今頃引っぱたいてやってるわよっ」


 どうしようもなく腹が立った。どうしようもなくやるせなかった。

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