その透き通る手で
独り言になってしまった声が、風に流されて消える。



え。
――どうして?



今の今までそこにいたはずのレンの姿がどこにもない。


こつぜんと姿を消すって、これ以上ないほど似合いすぎるこの状況。


「――レン?」


いないって、見ればわかるのにレンを呼んでみる。


当然わたしの呼びかけに答える声もなく。


呆然とたたずむわたしの背後で、道を遮断していたポールがゆらゆらと上がっていった……
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