その透き通る手で

「どうぞ。本の返却ですか?」


 六川先生に通された人物を見て、眞井は露骨に嫌な顔をしてみせた。
 ボソボソとつぶやく。


「うわ、委員長……なんて間の悪い男なんだか」


 もちろん長谷君には聞こえなかったみたいだけど、レンの耳にはしっかり届いたらしく、


『この眞井って子、あいつのこと嫌いなのか?』


 なんて面と向かって聞きづらいようなことを、遠慮なく聞いてくる。
 レンの声や姿が他の人に感じられなくても、さすがにわたしがしゃべっちゃまずいので、曖昧にうなづいてみせた。


「?」


 返却手続きを待つ長谷君が、ふとこちらを見た。
 クラスメイトを見かけたっていうのとは、また違った反応。


「――やっぱり、そうか」

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