その透き通る手で
なにやら一人つぶやいて、わたしたちの方へ歩いてきた。
迷いのない足取りに、なんだか悪事の現場に踏み入られるみたいで逃げ出したくなる。
「ちょっと委員長、何の用よ?」
「いちいち突っかかるな、眞井白雪。おまえじゃなくて、こっちに用がある」
「フルネームで呼ばないで!」と毛を逆立てて怒る猫みたいな眞井を綺麗に無視して、こっちと親指を立てて指し示したのは、わたし……というより、その隣。
普通の人にとっては、何もないはずの空間。
――つまり、レンだった。
「あんた、こんなところで何をしてる? 死者が生者にまとわりつくな」
まっすぐにレンを見すえて、厳しくとがめた。
レンはまさか、自分に話しかけられるだなんて思ってなくて、声もなく驚いてる。
だよね。クラスメイトのわたしたちですら驚きだもん。
長谷君が、まさか幽霊の存在を感知出来る人だったなんて。